キスにスパイスを、キスをスパイスに
私の方が温泉に浸かるまでの準備諸々に時間がかかるため、私が髪と身体を洗い終わった頃に洋輔さんを呼ぶことになった。


家から持ち込んだ入浴セットを抱えて浴室に向かうと、それを見ていた洋輔さんは「重かったのはそれが原因か」と呆れたように苦笑していた。


よく考えると、今日の旅行のためにお互いに仕事が忙しかったから、最近身体を重ねてないな。私に夜勤がある事もだし、洋輔さんは体を使う仕事で疲れてきって帰ることもあり、お互いの家を行き来していても、一緒に過ごすだけということが多かった。よくよく考えるとすれ違いばかりだったな。


そんな今日までのことを振り返りながら、せっせと髪や身体を洗い、洗顔まで済ませてしまった。少しでも綺麗な姿を見て欲しいから、丁寧に。そして、今日はヘアパックも追加してしまおう。


小分けして少しだけ持ってきていたクリームを毛先にたっぷりと塗った。


――ガラガラ


もうすぐ終わるからと、洋輔さんに声を掛けるため脱衣所へと繋がる扉を開いた。


「洋輔さん、もうすぐ終わるよ」

「あー、分かった」


待機していたのだろう、私の声掛けに返事はすぐに返ってきた。この様子だとあっという間に来てしまいそう。洗い場から移動しなくちゃね。


少し早いかなと思いながらも慌てて髪をお湯で流した。シャワーの音の合間からガタガタと彼がこちらへ向かってくるであろう音が聞こえてくる。
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop