【貴方と本当のキスがしたい。】(*ラブコスメ参加作品)
すると
藍原専務の肩が一瞬ピクリとなった。
そしてすぐに
抱き締めている腕を緩め
少しだけ私の体を離した彼は
スーツのポケットから
ハンカチを取り出すと
私の涙を優しく拭きながら
「…美紅、悪かった。
今まで…黙ってて。」
と、切なげな表情で私に謝ってきた。
ああ…やっぱりそうか。
彼は今自分が既婚者である事を
私に黙っていた事に謝っているんだ。
…そう思った時
「…俺は結婚していない。」
突然、彼が口を開いた。
「…えっ!?」
私は驚いて顔を見上げた。
今確か
『…結婚していない。』って言った?
そう聞こえたような…。
「…もう一度言ってやろうか?」
彼はクスリと笑うと
「…俺は、結婚はしていない。
…正しく言えば相手に頼まれて
夫婦のフリをして同居していただけだ。
今は同居を解消して
完全に一人暮らしをしている。
入籍していないから
戸籍も勿論真っさらで
正真正銘の独身だ。
だから…何の問題もない。」
藍原専務は想定外の返答と
意外な事実を口にすると
「…俺が、美紅を愛人なんかに
するわけないだろ?」
と、再び私の唇に軽く
“チュッ”とキスをした。