淋しいお月様
「タクミに会えるのなんて、久しぶりだよ~。やだ~、どきどきしてきちゃった」

潤んだ瞳は、乙女だ。

やっぱりこれも恋のうちなのだろう、彼女の中では。

私もステージ上に目を向ける。

水色のライトが当たっている舞台上では、スタッフらしきひとがギターやベースを弾き鳴らして、調整をしている。

ステージの真ん中にあるグランドピアノも、スタッフが調律をしている。

「タクミって、何の楽器やるの?」

「え? ほんとに知らないんだね。ピアノだよ、ピアノ」

道理でピアノが真ん中にあるはずだ。

マイクスタンドも、ピアノの位置に合わせてある。

男のひとなのに、ピアノなんだ。

なんだか素敵かも。

私までどきどきし始めてきた。
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