淋しいお月様
「静哉、って――?」

放心状態で、セイゴさんは尋ねてくる。

「あ……」

私は言葉に詰まった。

「静哉って、彼氏?」

「……うん……」

音信不通だったけれど、静哉は彼氏だ。

別れ話など、していない。

「そっか……星羅ちゃん、彼氏いたんだ……」

力の無い声で、セイゴさんは呟く。

「そんな素振り、なかったから……彼氏いるなんて……」

「でも、違うの。ずっと音信不通だったの」

「だけど、連絡来たじゃない」

「それは……そうだけど……」

私は口籠もる。

「俺は、淋しい」

そう言って、セイゴさんは部屋から出て行った。

――傷つけた……。

大事なひとを、失ってしまった……。

何故か私まで、へこんでしまった。
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