淋しいお月様
ピルピルピルピル……。

また電話が鳴った。

静哉からだ。

「もしもし? 今取り込んでて……」

『多久美省吾か? そこにいるのか?』

「……どうしてセイゴさんのこと、知ってるの?」

『週刊誌見たもん。オマエもやるよな』

「モザイクかかってるのに、なんで私だって……」

『鞄のペンギン、あれ、俺が買ってやったやつだよな』

覚えてたんだ――。

ほんのり嬉しくなった。

だけど、何で今更、静哉は連絡をしてきたんだろう。

セイゴさんと噂になって、焦ったのだろうか。

『さすが俺の彼女だよな。芸能人と噂になるだなんて。でも、つきあってないんだろ? オマエは俺のものだろ?』

私は静哉を追って、東京まできたのだ。

私が好きなのは、静哉なのだ。

今までも、これからも――。

そう、自分に、言い聞かせてた。

セイゴさんとのことは、忘れよう。

必死に、自分に、言い聞かせてた。
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