お姉ちゃんの憂鬱
「あたしも嬉しい」
「いや、きっと僕のほうが嬉しいです」
「いーや、あたしだね」
「絶対に僕の方が上ですよ」
「ふふっ なんの戦いだよってな」
「だってこれは譲れないところですからね。…僕、高校の行事がこんなに楽しいと思ったのは初めてなんですもん」
キュッとストラップを握りしめた直くんは、とても小さな声で呟いた。
「今までは、僕が話すと変な顔をされたんです。何言ってんだこいつみたいな。だから、なるべく自分の思ったことを口にしないようにしてきたんですよ」
同じ班になる前、教室で一人でいる彼が誰かと話をしているところを見たことがあるかと聞かれれば、そこまで意識になかったためわからないという答えになってしまうだろう。
そのくらいのレベルで直くんは印象になく、いつだって一人だった。
「でも、班で最初に話していた時にお姉ちゃんがメグくんのことをギラギラって言ったのを聞いて、僕と同じこと考えてる人がいたって思ったんです」
「あー、あれね」
最初にあだ名でも決めようかと言ったとき、ついメグのことをギラギラと言ってしまったこともあった。
実際にメグはギラギラしてるから仕方のないことだったのだよ。
「それで、自分の思ってたことを言ってみたら、みんな普通に笑って受け入れてくれて、それがすごく嬉しくて、この人たちは自分のことを変な目で見ない人たちなんだなあって思いました」