お姉ちゃんの憂鬱









「あたし、あんたらのこと大好きだわ!」






首にヘッドフォンをぶらさげ、口にチュッパチャップスをくわえた彼女は、満面の笑みで確かにそう言った。






「また1年よろしくな!!」


「はいはい。大好きとか恥ずかしいから大きい声で言わないの。」


「は?大好きなもんは大好きなんだから仕方ねーだろ。さやかもよく「カナ好きー」とか言ってんだろうが。」


「おっきい声で叫んだりしてませんー」


「あたしだって別に叫んではいないだろ。つうか伝わればなんでもいいんだよこんなのは。」


「山さん、僕もみんなのこと好きです。山さんには負けません。ね、メグくん。」


「すごい角度から流れ弾飛んできたな。オレを巻き込むな。」


「これからメグくんが僕の分まで愛を叫びますので刮目せよ。」


「いやしねぇから。叫びたいなら自分で叫べよ。」


「僕はどちらかというと叫ぶより囁く派です。」


「お前の事情なんか知るか。あれだろ、山城がオレらを代表して叫んだんだろ?それでもういいじゃん。」


「だからあたし叫んでねぇって!」


「ちょっと吉岡くんが教室の中心で愛を叫ぶの見たかった。」


「ほら、メグくん需要があるそうですよ。需要と供給のバランスが大事。」


「いくら待っても供給しねぇからな。」


「わくわく。」
「わくわく。」
「わくわく。」


「……しねぇからな!!」



「…はぁ、まったく。みんなしてメグをいじめないの。特に直くんはクラス一緒になれてテンション上がる気持ちはわかるけど一旦落ち着きなさい。メグも直くんの頭叩かない。まどかとさぁちゃんはそんな可愛い内容でケンカしない。

あんたたちがお互いに大好きなのは充分伝わってるから大人しくしてなさい。」




「……やっぱりお姉ちゃんとセットにしといて良かったな。そいつらのこと任せたぞお姉ちゃん。」




お姉ちゃんの憂鬱はこれからもまだまだ続くようです。






END







< 334 / 335 >

この作品をシェア

pagetop