Love their
でも、何故。


昨日はこうして覚悟を決めて彼との時間の引換に、


サトルとの別れを決めたのに。



レイは部屋の中心に置かれたソファにそのまま身体を雪崩れ込むように伏せてしまった。


聞こえてくるのは、軋むソファの音、空調と冷蔵庫の運転音。



あまりにも静かで。


不気味に頭に染みる運転音すら煩く感じた。



レイは耳を澄ませば澄ます程、塞ぎたくなるような衝動に駆られた。



私は昨日ここに来て。

ここに座ってビールを飲んで。

ここでキスして。
キスされて。

彼に抱かれて。



どんな、形あるものを望んでいたのだろう。


どんな私を求めていたのだろう。



伏せた顔を少し横に向け目を閉じたまま朝日を浴びる。


朝はこんなに明るい。


窓越しに照りつけられて、こんなに熱い。



変わらない朝。



サトルからのコールはない。


毎朝必ず、しょうもない話をしながら通勤を急ぐ。


ウザイ、とか思った時もあったけれど。


朝の憂鬱な心を潤してくれたこともあった。


それはそれで欠かせない私の朝になっていた。




さっきバッグを手にした際にチラとみた携帯のランプは暗いままだった。

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