Love their
自宅に戻ったレイは照り付ける太陽から逃れるようにカーテンを締め切ってフローリングの上で仰向けになっていた。


朝から何も口にしていなかったが午後を回ろうとしても食欲が沸かなかった。


ただ天井や壁のクロスの細かい模様を数えるように見ていた。


さっきの写真。

彼の生い立ちもだが見てはいけないものを見てしまったようで。


きっと踏み込んではいけなかった領域。


笑顔の消えた幼少時代の彼の目がレイを責めたてる。

人には言えない何かを持っていて。

気付かれてはいけない心の闇を抱えながら生きている。


レイもまたそうだった。


彼と共にした夜の中の2人の会話の中に、パパのことは明かさなかった。


事実とは曲げてやんわりと人物を語っただけだった。

決して幼い頃にパパが私とママを置いて蒸発してしまったとは言えなかった。


もしかしたら、誰が見ても不思議に思うであろう彼の表情の変化の裏には、何か辛い悲しい出来事があったのかもしれない。


人は自分の中で勝手に作りあげた印象をその人の全てだとむやみに当てはめて。

心を開こうとするドアを外側から開かないように押さえてしまっているのかもしれない。


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