Love their
やがてそれに気付き生きていく中で、作られた印象に合わせることが楽であるかのような錯覚に迷いこんでしまう。


生きていく為に弱い部分を隠しながらえていくすべを。

知らず知らずのうちに身につけてしまって。


だからこそ、知りたいと思う欲求を発する自分を抑えることが出来ない。


同じ匂いのする彼を知りたいと願う。


同じ匂いのする私を知って欲しいと乞う。


だからこそ私たちが出逢うべくして出逢った。


そう結論付けなければ今の私が私であることを、


狂気の沙汰に堕ちた只の尻軽女だというレッテルが貼られるであろう世の中に、


真っ向から立ち向かうことは出来ない。


現実に引き戻されれば、必要とするサトルも。


本能だけで時間を数える時に必要とする彼も。


やっぱりどちらも失いたくない。


こうして何もせずに過ぎていく時間を惜しいと思いつつ時計の針のスピードの遅さに苛立つ気持ちが生まれる。


生きることにもっと貪欲になりたい。


私が生まれてくる時代は今じゃなかったような気がする。


生きるか死ぬかの遠い昔の時代。


その時代を生きているならば、きっとこんな風に二つを追うこともなかったかも。
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