Love their
行き急ぐ人たちに次々と追い抜かれながらサトルの家に向かって歩く。


携帯のストラップを手首に下げて重いハンドルを押す。


歩く度にストラップの先で揺れる携帯もレイと同じ無言のままだった。


やがて5分ほど歩き次の角を左に曲がればサトルのアパートに、という所までさしかかった時に一台のタクシーがレイの脇に停まった。


自動に開くドアを避けながら危ないなぁ、と思いつつも脇目振らずに角を曲がろうとした時サトルの声が聞こえた。


「おじさん、領収書〜」


?!…サトル?


どうも〜と言いながら領収書を受け取り後部座席からサトルが降りて来た。


「お〜間に合った…ってか今日、急じゃね〜?」


角を曲がらずにUターンするタクシーを見過ごしながらサトルが言った。


「いや、だから何度も電話したじゃん」


「あ〜…そうだよな。ごめん」


サトルは携帯を見ながら自転車の前籠にある食材の袋を抱えた。


レイはサトルのながらの受け答えに少しムッとした。

「フツー折り返し電話するでしょ?」


「あぁ、丁度打ち合わせ入っててさ…」


「終わってから電話ぐらい出来んじゃん」


「ごめん、メール打ってから思ったよ…で、」

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