Love their
会話しながら歩くうちにアパートの前まで辿り着いたようだった。


サトルは話の途中でバッグからキーケースを取り出してからレイにそこ、と自転車置き場を顎で差した。


とりあえず自転車を停めて会話に戻るレイ。


サトルは溢れそうな郵便受けを開いて中の物から必要な分だけ選別して取り出すとパタンと閉めた。


「で?何?」


「あぁ、…で、でな、」


階段を上り二階の奥のサトルの部屋へと歩く。


「でな、…だから何よ」


「ちょっと待てよ、とりあえず鍵開けるからさ」


逸るレイをなだめてサトルは鍵穴にキーを差し込んだ。

閉め切った部屋から一気に圧縮されていた空気が2人に覆い被さるように流れ出ていく。


幸い、玄関に置かれた香水のおかげか不快な感じはしなかった。


「で、それで、帰らなきゃって思って…」

「思って?」


レイは靴を脱ぐサトルを追い立てるように言った言葉尻を繰り返した。


本当はこうして思わず帰って来たサトルに素直にホッとしたと言えばいいのだが、

どうしても聞かずにいれなかった。


「タクシーに乗って帰ってきたってわけ」


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