Love their
運転手は窓の内側からこちらに身を乗り出すようにして言った。



「相手を大事に思うなんてそりゃ、押し付けだ。自分への陶酔だよ。」



「…そうかな…」




「相手が一番望むのはあんたの幸せだから自分のことを大事にしなよっそれが相手を大事にするってことだ」



「…分かった」



説教じみた運転手の声かけに言いくるめられたかのように返事をした。



「今日はひとっ走りしたら愛する奥さんの飯食いに帰るから、気をつけて帰りなよ〜」



運転手はそう言うと窓を締めて客を迎え入れる準備をした。



「…ありがと」



レイは聞こえないだろうが客を乗せるﾀｸｼｰに向かって呟いた。



走り去るﾀｸｼｰのﾊﾞｯｸﾗｲﾄが見えなくなるまで見送り空を見上げた。



相手のことを思うって、
ﾑｽﾞｶｼｲ…。



相手を大事にするって難しいことだな…。



レイはさっき言われた運転手の言葉を思い出していた。



身体の熱は話して頭を回転させることによって少しだけ取れたようだ。



結局、私も面白い人、と同じね。


緩い雲の流れを見つめながら苦笑いした。




大事に思ってたなんて、ほんと私の押し付けだったのかもね。
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