Love their
「そんな…」


レイは無口な彼の横顔を見つめながら悔しさと恥ずかしさでいっぱいになった。


言い返す言葉が出なくてもどかしく、この場から逃げたい気持ちも湧いてきた。



そして、それ以上に彼の本心かどうか分からない言葉に無性に悲しさがこみあげてきた。



「ひどいっっ…」




そんな言い方…。




「僕も遅くにオペが入って疲れているんだ。もう帰ろう」



そう言って彼が小刻みに震えるレイの手を取り彼が優しく握る。



ひどい。



そんな風に言った後、こうして優しくしないで。




ズルイ。




昨日の夜、あんなに情熱的に愛してくれたのは私の勘違いだったの?



それを私だけに向けられた愛情だと思ったのは勘違いだったの?




「ここ、右でいいよね」



普段レイの心内を読んではリードして返してくれる彼。


今は全くレイの気持ちを無視した彼の言動に唇を噛みしめる。




この人だと思ってた私は1人ばかみたいにのぼせてただけなの??



好きとか愛してるという言葉はそんなに簡単に使うものなの??




「もう、いいです…」



レイはナビを聞いてきた彼に呟いた。


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