誰もしらない世界
そして顔を合わせる二人はいつしか惹かれ合うようになっていた。
歩にない魅力的な美智子の色気と気づかいが、なんとも言えない男の心を鷲掴みするような感覚だった。歩にない魅力的な女性であった。

そして歩と合わない日に浩介は美智子と会うようになり、美智子と会わない日に歩に会う。

日々の二人のやりとりは繰り返されていく。
ある日の夜珍しく1人でいる浩介はベッドに寝転びながら、考えことをぼーっとしていた。

その時、歩からいつものようにメールが入る。
歩からの着信であった。
歩(なにしてる!)

浩介(寝てた!)
歩から電話がかかってきた。
しかし、浩介は電話にでることもなく、無視を続けた。
そして、その二つの駆け引きは続いていた。
美智子に惹かれるはずがないのに美智子に引かれていく、悪いとわかっているのに、止められない浩介がいた。

歩とデートをした後、歩を自宅に送り届けた後、美智子にメールを打つ。

浩介(今からいくよ。美智子さん。)

美智子(待ってる。)

二人は、いつも待ち合わせをする噴水のある公園で抱きあう。

美智子(会いたかった♪)

浩介(俺も。)

そんな時歩からケータイがなる。
プルルルル…

浩介は、美智子に言う。
浩介(ちょっと仕事の電話。待ってて。)

浩介(もしもし。)
歩(ねぇ、最近冷たくない?)
浩介(気のせいだよ?じゃあ、今また仕事入って忙しいから。)

浩介は美智子の元に戻る。
浩介(ごめんね。行こうか!)

二人はそのままホテルに向かう。そして、一夜を共に過ごした。

一方、歩は着々と式場を選んだり、ブライダルエステに行き、ドレスを選んでいた。
そんな日々がなんども続いた。歩は二人の距離が離れていくのを気がつきもしないまま。

一週間後、また歩はメールを打つ。
歩(ねぇ、浩介今日会えない?)

浩介からは返事はなかった。

それから三日後にメールが入る。
浩介(ごめんね。忙しかった。)


そんな日々の会えないやりとりは続いたが、歩には、
結婚
という二文字があったため、我慢ができていた。
あと少し…あと少し…
そんな我慢を期待に変えていた。

二人の結婚の前日が、迫ろうとしていた日、浩介から歩にメールが入る。

歩は結婚式が明日になるため、喜んでメールをひらく。

浩介(話したいことがある。会社の近くの喫茶店にきてくれ。)

歩はケータイで返信を、送る。
歩(わかった)
と送り、歩は一体なんなんだろうと期待を膨らませていた。
久しぶりに二人は顔を合わせて、どこかぎこちなかった。

浩介が口を開く。
浩介(今さらでごめん。結婚はなしにしたい。好きな人ができた。)

歩(え…)
歩は飲んでいたお茶を落とした。
ガシャーンという音と共に頭の中が真っ白になった。

浩介(費用は全額俺が持つ。すべて俺が手続きしとく。)
数分ボーッとしたあと、席に置いてあった鞄を取って喫茶店を歩は後にした。

自宅に帰ると浩介からメールが入っていた。
歩はぼーっとしたままケータイを開ける。

浩介(ごめん。早く言いたかったけど、言えなかった。)

歩(ごめんじゃない。ひどい。あんたなんか大嫌い)
 
そう送り、布団で泣き続けた。
会社にも行きたくない。歩は翌日、会社をやめた。一ヶ月、いやそれは永遠に歩の心の傷となった。
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