誰もしらない世界
れいかはそれを見なかったかのように気を取り直し、明るく振る舞う。

れいか(水商売、初めてでしょ?色々と教えてあげるわね。)
心にもない台詞をとっさになげかけた。

歩(よろしくお願いします。私なにもわからないので。)

そう言っている間に店のオープンの時間はおとずれた。
歩はれいかの席のヘルプにつけられた。

れいかの客は物凄くお金持ちな客ばかりだった。れいかがお客に歩の事を紹介する。

れいか(この子、今日から入った新人の子。)

短髪に口ひげをはやした男に歩を紹介する。
男(可愛いじゃないか。君はじめてなの?)

歩(そうです。よろしくお願いします。)
にっこり笑う。
れいかはとっさに歩にはなしかける。

れいか(私の一番大事なお客様なのよ)

歩(そうなんですか?れいかさんに一番大事にされるって凄く名声のあるお方なんですね。尊敬します。そのネクタイすごく素敵ですね。よくお似合いですよ。)


そんなふうに持ち上げて誉めた。

お客はまんざらでもない様子で笑う。

客(そんな事ないよ。はっはっは!君、なかなか口が上手だね、この商売むいてるよ!)

歩(どうもありがとうございます。)

そんなふうに会話をする歩をれいかは冷静な目で見つめていた。そしてまたすぐに表情を戻してお客に話しかける。

れいか(浮気しちゃだめだからね)

お客(当たり前だろう)

そんなふうに男と会話をしていた時に、れいかは黒服に他の席へ呼ばれる。

れいか(ちょっと失礼します。)
席をたつと、れいかは黒服に耳打ちする。

れいか(あの子、私の席にあまりつけないでちょうだい。お客、もってかれるわ。)

ちらっと横目で歩と客が楽しそうに笑っているところを冷たい眼差しでみつめた。そしてまたすぐに別の席へれいかは移動した。
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