社長に求愛されました


洋子の言葉に、篤紀が「小言ですか……」と苦笑いを浮かべる。
土日も一緒にいたいがために、ちえりにひとりの時間を与える事は少なかったからだ。

そのせいでなかなかここにも帰れずにそれに対しての小言だったのだろうかと心配がよぎったからだったのだが。

「うちで毎日のように働いてもらってるので、ご家族との時間がなかなかとれずに申し訳ないです」

会社を隠れ蓑にしたのは、ちえりが自分との関係をどう話しているのかが分からなかったからだ。
恐らく何も話していないのだろうと思い、仕事のせいだと言う事にし謝ると、洋子が笑顔で答える。

「まぁ、半分以上は私のエゴなんですけどね。
この子はしっかりしてますから、たまに元気な顔を見せてくれれば後は自由にしてくれて構わないんですよ。
ただ、どうしても色々言いたくなってしまうだけで。
ほら、ちえりちゃん、せっかく社長さんがいらしているんだから早く出かける準備してらっしゃい」
「でも……」
「ほら、早く」




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