社長に求愛されました


「一週間くらいは、あっちに泊まるつもりでした。
まさか、こんなに早く帰ってくる事になるとは思ってませんでしたけど」

朝ここを出たのが7時半。
一週間は帰らないつもりだったのに、誰が家を出た数時間後に戻ってくる事になるなんて予想しただろう。

わずかに苦笑いを浮かべながら答えたちえりを見て、篤紀も同じように笑う。

「携帯の電源入れてみろ。俺からの着信が20件は入ってるから」

言われるまま電源を入れると、電源を切っている間に受けた不在着信は24件。
22件は篤紀からで、残りの2件は綾子からだった。

恐らく、篤紀が探しに出た事を伝えてくれようとしたのだろう。

「なんで、あの場所が分かったんですか?」

ちえりが立ったまま聞くと、篤紀はベッドに座りながら「タクシー使ったんだよ」と答えた。

「井上から聞いた後、すぐここに来たけどいねぇし、実家帰ったのかもしれないって事はすぐに思い浮かんだけど、実家の情報が何もなかったから、タクシーで徒歩1時間圏内の弁当屋全部回ろうと思って。
ネットで調べて回るより、そういう条件ならタクシーの方が詳しいだろ。だから」


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