社長に求愛されました
今までお世話になった事を考えれば、この縁談を受け入れるべきなのかもしれない。
金銭的な面でも生活の面でも、十分すぎるくらいにお世話になっているのはちえり自身よく分かっている。
弟の慎一に関しては大学の学費まで面倒みてもらっている状態だ。
それに対する恩を思えば、歩と結婚しこのお店を継ぐことがなによりの恩返しになるのは、分かりきった事だった。
自分がお嫁にくるだけで気持ちが明るくなるとまで言ってくれてるのだ。
こんなに分かりやすい恩返しは他にはきっとない。
それに。
育ててもらっておきながら、恩人でもある洋子の頼みを断るなんて……許される事だろうか。
朝、電話をもらった時から、ずっとそれを考えていた。
そして、そんな自分勝手な真似、許されないんじゃないかとも。
もし……もしも篤紀に想いを伝える前だったら。
きっとそうしていたかもしれない。
歩と一緒になりこのお店を継ぐ事が一番の恩返しだと考え、自分の意思なんて後回しで頷いていたかもしれない。
洋子たちには本当に感謝しているし、それが形として返せるなら……と。
けれど――。
きゅっと唇をかんだちえりが、顔を上げ洋子を見つめる。