恋はしょうがない。~職員室であなたと~
2度目の衝動の波が、真琴を襲った時……、我に返った真琴は、思いっきり古庄の胸と顎を突いた。
突然のことに、古庄が驚いて身を引いた瞬間、真琴は古庄の側を逃げ出す。
教室のドアのところで振り返り、鋭い視線で古庄を貫いた。
「……今日のことは、全部忘れます。……もし、静香さんを不幸にしたら、絶対にあなたを許さないから!」
真琴は涙をほとばしらせながら、涙声でそう振り絞ると、踵を返して教室を出て行った。
廊下を小走りで遠ざかっていく真琴の足音を聞きながら、古庄は薄暗い教室の中で一人立ち尽くした。
真琴は、ほどなく足が震えて走れなくなった。
涙は止めようがなく、泣いているのを誰かに見られたくないので、トイレへと駆け込む。
個室に入って押し寄せて来たのは、圧倒的な古庄の余韻。
耳に残る古庄の、真琴へと想いを語る言葉。
体に残る古庄の抱擁とキスの感覚。
愛しくてたまらない古庄のそれらすべてを、たった今真琴は拒絶してきた。
――だけど、これでいい……
心は切り裂かれて、悲鳴をあげて助けを求めていたけれども、真琴は必死で自分に言い聞かせた。
静香と結婚して、ずっと静香と一緒にいるようになれば、古庄はきっと静香なことが好きになる。
そして、自分とのことは、一時の気の迷いだったと気づくだろう。
暗いトイレの個室で、涙を拭い嗚咽を押し殺しながら、真琴は自分の心を力ずくで納得させた。