蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
人間でも、動物でも、もって生まれた『寿命』がある。
この世に生まれ出でた瞬間から始まる、だれもが逃れ得ない死へのカウントダウン。
それを運命と呼ぶのか、宿命と呼ぶのかは分からないが、変えようのない事だと拓郎は思っている。
叶うなら『天寿を全うして老衰で』と行きたい所だが、大抵の生き物はその恩恵に与ることは少ないし、自分も例外ではない。
拓郎の両親も然り――。
自分自身も病気か事故か、いずれにしても、ある日突然生を終えるのだろう。
だが、物理的努力で命を長らえる事が出来るのなら、それもまた、もって生まれた寿命。
小さな子猫の命を繋ぐ術があるなら、そのために金銭や労力を惜しむような感性は、拓郎になない。
何よりも、藍の悲しむ顔を見たくはなかった。