蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

動物園は、平日とはいえ、かなりの数の家族連れやカップルで賑わっていた。


天気は快晴。


春の心地よい日差しが、全てを穏やかに包み込んでいる。


「キリンって……」


「うん?」


「瞳が、凄く大きいんですね……」


キリンの目の大きさが予想外だったらしく、藍が呆然と言うのがおかしくて、拓郎は思わず笑ってしまった。


確かに、キリンの瞳は普通の動物と比べても、バランス的にかなり大きい。


顔の骨格自体が細い上に黒目がちなので、よけいに大きく感じるのだ。


「草食で大人しそうに見えるけど、雄はあの長い首を振り回して、かなり激しい縄張り争いをするんだ」


「ええ!? そうなんですか?」


拓郎のうんちく話に、藍は驚いたように目を見張って、まじまじとキリンの長い首を見上げた。


のほほんと草を噛むひょうきんな顔からは、想像が付かない。


だが実際、この長い首と角を武器に、かなり壮絶な戦いをするのだ。


ぶんぶんと首を振り回す様は、正に圧巻だ。


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