蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「うえ~ん! ママ~!」


拓郎と視線があった途端、その子供が泣き出した。


年は、5、6歳で、ジーンズにブルーのシャツ、野球帽と言う服装からすると、たぶん男の子。藍のワンピースの裾を、しっかりと握りしめている。


「ど、どうしたの? ボク?」


驚いた藍が、その子の顔を覗き込む。


「ママがいないの~!」


迷子決定だ。


はしゃぎすぎて、母親とはぐれてしまったのだろう。


泣きじゃくるその子を、拓郎は、ひょいっと肩車した。


「良く見えるだろう? ママが見えたら教えてくれるかい?」


ここぞとばかりに、笑顔で話しかける。


動物受けと子供受けは良いのだ。こう言う時こそ、童顔が役に立つ。

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