蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

だが。


「いったい、何処を探せばいいって言うんだ……?」


ハンドルを握りしめ、呆然と、言葉を吐き出す。


拓郎は、『大沼藍』という人間について何も知らない。


何処に住んでいるのか、家族はいるのか、友人が誰なのか――。


何一つ知らなかった。


『今すぐじゃなくてもいい。藍が、そうしてもいいって気持ちになったら、俺と結婚して貰えるか?』


あの言葉が、彼女を追いつめたのだろうか?


いや、そんなはずはない……。


あの涙……。『嬉しい』と言って流したあの涙が、偽りのものだったとはとても思えないし、思いたくはない。


色々な想いが、頭の中で一気に駆け抜け、もやもやと渦を巻く。

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