蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
確か、野菜同士を組み合わせて、新しい野菜を作る研究もしていたはずだ。
でもそれが何だったか思い出せない。
唯一浮かんだのは、いつだかTVのニュースで見たトマトとポテトのハイブリッド『ポマト』。
「……ポマトって、美味しいんでしょう……か?」
なんとか、記憶の片隅に残っていた単語を引き出した拓郎だったが、さすがにこの質問は無いだろうと、声が尻切れトンボに消えていく。
「……さあ、食べたことが無いので、私には何とも」
会話を成立させようと焦るあまり、訳の分からない質問をする拓郎に、柏木の冷静な視線と言葉が突き刺さる。
まずい。
まずいぞこれは。
源一郎の取材の時のように、時間があった訳じゃないので、全てが行き当たりバッタリ。
くそ度胸だけは自信がある拓郎も、遺伝子研究だの品種改良だのいう専門分野の知識など無いに等しい。
この期に及んで、雑誌の取材という選択肢を誤ったことを拓郎は悟った。