蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

どれくらい道無き道を歩いただろうか、以外と短い時間なのかもしれないが、今の二人には何時間にも感じられる。

その場所に着いたときには、二人ともすっかり濡れ鼠(ねずみ)になってしまっていた。

「着いたよ。ここだ」

「ここ……は?」

少し開けた台地に古びた丸太造りの小屋が建っていた。

さほど大きくはなく、たぶん、拓郎のアパートの部屋よりは広い位だろう。

古びて木々に埋もれたその小屋には、当たり前だが人の気配はない。

鬱蒼と茂る木々に囲まれ打ち捨てられたように佇むその姿は、どこかお化け屋敷めいていて、恐怖心を駆り立てる。

照らすのが懐中電灯の頼りない光だけと言うもの、嫌が応にもそのおどろおどろしい雰囲気を助長していた。

童話の世界なら、間違いなく『魔法使いのおばあさん』が住んでいそうだと、藍は思った。



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