蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
「研究所が建つ以前、使われていたものらしいけど、この山そのものが日掛グループの所有になっているから、日掛の所有の不動産になるのかな? もっとも、この存在を把握してるのは、柏木さん位だろうけどね」
思わず山小屋に見入ってしまっていた藍に説明する拓郎の声は、どこか楽しそうな響きを持っている。
藍は、視線を小屋からすぐ脇にある拓郎の顔に移した。
辛うじて判別できるその顔には、確かに楽しそうな表情が浮かんでいる。
「ん? 何? どうした?」
藍を抱えるように小屋の入り口まで辿り着いた拓郎は、その視線に気付いて首をかしげた。
「どう……して?」
「ん?」
「何だか……、楽しそう、だから」
藍の質問に拓郎は、「実際、楽しいから」とクスクスと笑い出した。