蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
藍は、普通の人間ではない。
外見は、普通の人間となんの変わりも無いが、あくまで人工的に造られたクローン体だ。その目的は臓器移植にあって、普通に生きるためではない。
藍は、拓郎と生活している間、『クローン』に付いて自分なりに調べてみた。
インターネットでの検索が主なものだが、氾濫する情報の中で一番興味を引かれたのは、羊のクローン実験の記事だった。
クローン羊。
彼女は、普通の羊の半分の寿命で死んでしまった。
通常は十二年は生きる筈の寿命は、六年に満たなかった。
人間と羊は違う。
でも藍は、クローン羊の辿った道が、そのまま自分の辿る未来図に見えて仕方がなかった。
だとしたら。
もし、長く生きられないのなら、せめて大好きなお姉ちゃんの助けになりたい。
それが、自分がこの世に生を受けた『存在意義』なのじゃないの?
「さあ、ここに座って」
拓郎の声に、藍は、はっと我に返った。