蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

藍は拓郎に手を引かれるまま、入り口から死角になっている壁際に腰を下ろした。

板張りの床には拓郎が薄い毛布が引いたのだが、雨でずぶぬれ状態の身体からはどんどん体温が奪われてしまい、藍の身体の震えは止まらない。

それを感じた拓郎は、藍に服を脱ぐように促した。

「え? でも……」

今更だが、恥ずかしさでモジモジと口ごもる藍の様子に、拓郎が手探りで服を脱がしにかかる。

「じ、自分で脱ぎますっ。大丈夫です!」

藍はぎょっとして、思わず身を捩(よじ)った。弾みで拓郎の手をパシンと払いのける形になってしまう。

「あ、傷付いた。今、このスケベ親父とか思っただろう?」

「お、思いません。今のは弾みです。弾み!」

自分も服を脱いでいるらしい拓郎のクスクスと楽しげな笑い声が聞こえて、自ら服を脱ぎなら藍は、何故かむっとした。

「はい、脱ぎました!」

藍のセリフが終わるや否や、拓郎は強引に藍を自分の方に抱き寄せた。小さい子供を抱くように、そのまま自分の膝の上に藍を横抱きに抱え込む。

そのまま、何も言葉を発しない。

とくん、とくんと規則正しい鼓動の音が、ふれあう素肌から熱い熱を伝える。

「拓郎?」

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