蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~
微かに伝わる拓郎の震えが寒さの為か、それとも感情の発露なのか。
藍には判断が付かない。
「拓郎……私、あの」
様々な感情が目まぐるしく浮き沈みして、上手く言葉にならなかった。
黙って拓郎から逃げ出して、研究所に戻った事に対する贖罪の気持ち。
そして、自分の為に危険を冒してこうしてこの場所にいてくれる事への、感謝の気持ち。
感情の割合的には『ありがとう』と言うべき所だが、藍の口から滑り出したのは『ごめんなさい』と言う、謝罪の言葉だった。
「どうして謝る?」
ギュっと抱きしめたまま、問いかける拓郎の声はあまりにも穏やかで、藍はなんと答えて良いか分からなくなる。
「だって、拓郎、怒ってるでしょう?」
「怒ってるよ。見付け出したらどうしてくれようと、色々プランを練っていたくらいだ」
「えっ!?」
少し低くなった拓郎の声のトーンが、本当に怒っているように思えて、藍は思わず固まった。