蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~

「は、……」


思わずこみ上げる、笑いの衝動。


そうか、今日は 二月十四日。


『バレンタインデー』って 奴か……。


「ありがとう、嬉しいよ。先生、初めてもらったよ」


「えへへ~」


丸みを帯びた白い頬が見る間にピンクに染まる。


今、目の前にいるのは、


小さくて、純粋で、愛おしい存在。


守らなくてはいけない存在。


思わず、二人の頭を代わる代わる『くしゃくしゃっ』とかき回すと、藍たちは嬉しそうにキャツキャと、笑い声を上げた。


浩介は、衣笠が、何故いつもこうしていたのか分かった気がした。


「一緒に食べようか?」


「うん!」


――教授、あなたの残した物は、私が守って行きます。


ご心配なさらずに、ゆっくり休んで下さい。


満面の笑みを浮かべる二人の幼い藍達を穏やかな眼差しで見詰めながら、浩介は心の中で静かに誓った。


あのいたずらっ子のようなおどけた目をして、衣笠が、笑っているような気がした。




――おわり――

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