蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


「家出少女が部屋に居る!?」


拓郎の説明に、君恵は驚いたように目を見開いた。


驚くのは当たり前だ。店子が勝手に他人を住まわせたら、大家としては面白いはずがない。


「ええ……まあ、そうなんです」


拓郎は思わず口ごもった。


「へぇ、芝崎君の部屋に、女の子がねぇ」


だが、驚いた表情の次に君恵の顔に浮かんだのは、ニヤリと意味あり気な笑いだ。


「また、猫ちゃんでも拾ってきたのかと思えば、女の子!」


拾った……。


それを言われると、拓郎は恐縮するしかない。


< 64 / 372 >

この作品をシェア

pagetop