*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
(………いや、良くないだろう。



だって、青瑞の姫は一歩間違えば怨霊だぞ?)






ついさっき、あわや溺死しかけたことを思い出し、ずぶ濡れの肩を抱いて身震いする。






(いや、一歩間違わなくても、人を泉に引き込んだりしている時点で悪霊だ………。



そんなやつを、野放しにしておいていいのか………?)






灯は釈然としない思いを抱えたまま、再び泉を見る。






そこには、長年待ち続けた男に出会えて嬉しそうに涙を流す青瑞の姫と、理想の美女に出会って興奮した様子の天城。







「…………まぁ、いいか。


本人がいいなら…………」







灯は額に手を当てて、溜め息と共に空を仰いだ。






息吹と白鷺も、一体どうなっているのだと呆然としている。






「………天城ったら、ほんとに美人に目がないんだから………」






「いや、美人が好きなのはいいんだが。


だからって、あんな幽霊だか何だか分からない女………」






「…………でも、嬉しそうね」





「あぁ………いきなり相思相愛だからな」






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