*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
その硬く握り締められた灯の手を、汀は無理やり手綱から引き剥がそうとする。






「ちょっとだけだから!!


お願い、やらせて!!」






「駄目だと言ってるだろう!!


我儘ばっかり言うな、お前はっ!!」






「蘇芳丸のいけずーっ!!」






「なんだとっ!? 俺はお前のためにっ」







汀は灯の怒鳴り声を無視し、その手に勢いよく噛みついた。






「いたたたっ!!」






灯はたまらず手を離してしまった。





汀がここぞとばかりに手綱を奪い取り、にんまりと笑う。





痛む手の甲に灯が目を奪われた一瞬に、汀は迷わず栗野の腹を蹴った。







「………わーーーーーっ!!」







灯の叫び声が、虚しく樹々の間をこだました。








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