*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「…………んまぁっ!!!


栗野、すごいすごいっ!!



なんて速いの、風のようだわ!!」






全身の筋肉を惜しむことなく使って駆ける栗野のたてがみに、汀は嬉しそうに触れる。





しばらく風を楽しんでから、汀はうんうんと頷いて口を開いた。






「………よし、そろそろ満足したわ。


お尻と腰も痛くなってきたし………。



こんなものにしておきましょうか、栗野」






汀はにこにこと栗野の首筋を撫でた。





しかし、栗野の走る速度は、どんどん上がっていく。






「…………栗野?


もういいわよ、さぁ、止まって」






体勢を崩しそうになって栗野の首にしがみつきながら、汀は少し慌てたように声を上げる。





はっと思いついて手綱をぐいと引いたが、栗野の足は緩まない。






「…………えっ、ちょ、ちょっと………、栗野!?



とっ、とまって、とまって!!」






振動が大きくなり、今にも栗野の背から振り落とされそうになる。







「くっ、くりのーーーっ!!


もういいのよ、大丈夫だから!!



あっ、きゃぁーーーっ!!」








< 32 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop