*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
そして、甘えた声で言う。





「ね、蘇芳丸。お願いがあるんだけど」




「…………聞きたくない」




「まぁ、そう言わずに、ね?」




「……………」





汀がさらに顔を近づけてくるので、灯はさらに身を引いた。






「………ね、私も手綱を引いてみたいな」






悪戯っぽく微笑む青い瞳を見下ろし、灯はぴくりと頬を震わせた。






「…………冗談もほどほどにしろ」






つっけんどんに拒否されたが、そんなことで諦める汀ではない。






「そんなけちけちしないで!」






「けちけちしてるわけじゃない。


常識的に判断しただけだ」






「んまっ、またそういうことを!


いいじゃないの、ちょっとだけだから!」






「こんな所で死ぬ気か!?」






「んまぁ、死ぬだなんて。


まったく、大袈裟なんだから」






「……………」







灯は説得を諦め、無言でぎゅっと手綱を握りしめた。







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