*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
息吹をちらりとも見ずに、灯は無言で歩き続ける。




息吹は苛立ちを抑えきれず、とうとう刀を抜いた。






「ーーーーー勝負!!」






大きく振り下ろされた刃を、灯が飛びすさって避けようとした瞬間。







「……………いい加減にしなさい!!」






鋭く甲高い声が、空気を切り裂いた。





息吹は思わず動きを止める。





声の主を探すように首を巡らし、背後に立っていた白鷺に目を止めた。






「……………え。


し………白鷺?


今の………白鷺か?」






いつも物静かに従順に控えている大人しい女性が、静かな怒気を含んだ面持ちで息吹をひたと見ている。




他人から厳しい声など向けられたことのない息吹は、驚きのあまり硬直した。






白鷺は表情を変えないまま、ゆっくりと口を開いた。








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