*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
そよ風が吹き、桜の花々が微かに揺れる。





空は藍色に澄み、望月の光は冴えていた。







「…………あなたと見る月は、すごくきれい………」







汀は、初めて灯と出会ったときの満月を思い出していた。






黄金の月を背に、突如現れた黒い人影。






息を呑むほど、美しい光景だった。







「あと何回、あなたと一緒に月を見られるのかしら………。



あと何回、あなたと一緒に桜を見られるのかしら………」







無意識に口から滑り出した問いに、灯は答えない。





ただ、視線を汀の青い瞳に落として、こう言った。






「…………あなた、じゃないだろう。



俺には、ちゃんと名前がある。



泉でちゃんと呼んでいたそうじゃないか」







汀はうっと呻いて顔を伏せた。




なんとなく、気恥ずかしいのだ。







「それは………あなたが、死んじゃうんじゃないかと思って、焦ってたから………」







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