*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
灯の怒りを感じ取り、汀は意外そうに首を傾げた。






「あら、そんなに痛かったの。


ごめんねぇ、蘇芳丸。


軽く噛んだだけのつもりだったんだけど」






「………あれが『軽く噛んだだけ』とは、恐れ入ったぞ。


今度、青丹丸と勝負してみろ、お前が勝つに違いない」






灯が精一杯の皮肉を言ってみせると、汀は栗野にしがみつきながらも笑顔の花を咲かせた。






「あらっ、それ、面白そうね!!


ね、どうやったら青丹丸と勝負できるかしら!?」






「〜〜〜〜知らんっ!!


真に受けるな!!


ただの嫌味だ、嫌味!!」






灯は堪えきれずに汀の頭を小突いた。




そうして、諦めたように溜息をつき、汀の手から手綱を引ったくる。






汀はほっと安心したような表情になった。






灯はぎゅっと手綱を握りしめ、強く引く。




しかし、やはり栗野の足は緩まなかった。






仕方なく、駆ける方向の調整だけを行う。





樹々があまり生えていないほうが安全だと考え、野原のほうへと栗野の顔を向けさせた。







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