*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
汀は目をまんまるに見開いてから、可笑しそうに噴き出した。





「ま、蘇芳丸ったら!


さっきのは、ちょっと甘噛みしただけじゃないの」






「……………はぁ??」






「それなのに、そんなにいじけちゃって。


まるで子どもみたいね、ふふふ」






「…………あれが、甘噛みだと!?


じゅうっぶんに痛かったぞ!?


お前の歯は一体どうなってるんだ!!」







灯はぴくぴくとこめかみを痙攣させながら言った。




事実、灯の右手には、くっきりと汀の歯型が浮かび上がっている。




血こそ出なかったが、一瞬息が止まるかと思うほど痛かったのだ。







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