*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
野原に出ると、足元が平坦になって駆けやすくなったためか、栗野はさらに速度を上げた。






「まぁっ、まだ走るの!?


あっ、きゃっ、おっ、おちるっ!!」






全身を激しく揺さぶられるような感覚に、汀はだんだんと目眩を覚えはじめた。




くらくらと頭が回り、栗野の首筋にしがみついている力が弱まってくる。





ずるり、と汀の身体が傾いだところを、灯ががしりと受け止めた。







「…………仕方ないな」







独りごとのように呟くと、灯は汀を抱えたまま手綱を手放した。





そして、迷いもなく、栗野の背から地面へと滑り落ちた。






「ーーーーーきゃっ!!」






汀はぎゅっと目を瞑り、身を縮こまらせて落馬の瞬間に備えた。




しかし、予期したような衝撃は、ほとんどなかった。





汀を抱きしめていた灯が、自分の身体を下にして転がり落ちたからだ。






「……………っ」






全身をしたたかに打ちつけ、痛みのあまり灯の視界は真っ暗になった。







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