*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「なんだ、そんなに大変か」





くくくと可笑しそうに笑う群雲を軽く睨み、灯は低く答える。






「大変もなにも………。


都にいたころは、あいつなりにずいぶん大人しくしていたのだと、今さらながらに分かったよ。



初めて会ったころも、あまりに素っ頓狂なんで驚いたが。



今はもう、信じられないくらい拍車がかかって、歯止めがまったくきかない。



好き勝手にやりたい放題、後先考えずに行動を起こすもんだから、まったく気の休まる暇がない!」






不愉快きわまりないといった表情で、いつになく饒舌に語る灯を、群雲はほっこりとした顔で見つめた。



他人にまったく興味を持たず、飄々と超然と生きてきた今までの灯を思えば、この変わり様は驚くべきものだった。




そしてまた、妖狐の産んだ子である常人ばなれした灯が、人間に近づいた証であるようにも感じられ、群雲は嬉しいのだった。







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