*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
しかし、灯本人にとっては、たまったものではない。





「………本当にあいつは………。


どうしてああなんだろうか。



あんなはちゃめちゃな奴、見たことも聞いたこともない」






「そうかい?」





「そうだよ!


この前なんて、あいつのせいで落馬かけたんだぞ。



馬に乗ったこともないくせに、俺の手を噛んでまで手綱を奪って、勝手に栗野を駆けさせたんだ。


栗野が興奮して言うことを聞かなくなってしまったから、なんとか飛び降りて事無きを得たが………。



一歩まちがえば命はなかった」






「………そりゃ、大変だったな」






珍しく愚痴っぽい灯をねぎらいながらも、灯と汀が仲良く馬乗りをしているところを想像し、群雲は笑いが洩れそうだった。







「それにな、ついさっきなんて、藤波が女だと急に思いこんで」





「…………はぁ? なんでまた」






脈絡もない汀の勘違いに、さすがの群雲も驚いてしまう。






< 63 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop