*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「あいつがそそっかしいからだよ。



なんでも、女どもが買い物に出かけるのに、藤波を荷物持ちで連れていったらしいんだが。


女ばかりで行く中に藤波が入っているというのを聞いて、あいつは持ち前のおっちょこちょいぶりを発揮して、藤波も女なんだと勘違いしたんだよ」






「………それはまた、すさまじい思い込みだな」






群雲が呆然と呟くと、分かってくれたかと灯は頷いてみせた。






「しかも、勘違いだけで終わりじゃないんだ。



今まで男だと思っていてごめん、などど訳の分からないことを言いながら藤波に抱きついて。


さらには、腹が固いだのなんだのと藤波の身体を触りたくって。



………まったく、何をしでかすか分かったもんじゃない」






心底不機嫌そうにぶつぶつ言う灯を見て、群雲は笑みを浮かべた。







(………汀が他の男に触れるのが嫌なんだな。



灯め、一丁前に嫉妬などして。


いつの間にか、人間らしくなったなあ………)






群雲は腕を組み、しみじみと頷いた。






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