*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「ところで群雲。


なんで俺を呼び出したんだ?」





唯一心を許して語り合える群雲に、ひとしきり愚痴を言い終えてすっきりした灯は、仕切り直すように訊ねた。




その言葉に、群雲はこくりと頷いて姿勢を正した。






「………実は、な。


黒松が都に行って聞いてきた話なんだが」






「………ほう」






群雲の声に深刻そうな響きを感じ取り、灯は軽く眉を上げた。






「都で、何かあったのか。


まさか、あの変態春宮(とうぐう)がらみじゃないだろうな?」






嫌そうにそう呟いた灯に、群雲は首を振る。





「いや、春宮殿下のほうは、相変わらずといったところさ。


こちらの居所は知れていないし、今のところ心配はないだろう」






「………そうか。


じゃあ、他に何かあるんだな」






琥珀色の静かな眼差しを受け、群雲はゆっくりと首を縦に振った。






「………あぁ。


東の盗賊たちの動きが、最近、不穏になっているらしいのだ」






黒松が仕入れてきた噂を、群雲は静かに語りだした。







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