箱入り結婚のススメ
「ありがとう。すごくうれしいよ」
そうやって、照れくさいような感情も、はっきり口に出してくれる室賀さんは、私よりずっと『綺麗な心』を持っている気がする。
「私……手袋が欲しいんです」
彼に伝えた初めてのわがままは、たったそれだけだった。
でも、こんなデートが初めての私には、とても勇気のいる言葉だった。
「それなら、買いにいこう。どこがいいかな」
心なしか、室賀さんの声が高くなった気がする。
こうしてなんでも口にすることは、ふたりの関係をより強くするのかもしれない。
一歩前進できた私は、自分に満足していた。
「前に入ったことのあるお店に行ってみてもいいですか?」
「もちろん」
私は彼の腕にかけた手に力を込めた。
私が選んだ手袋は、手首にファーがあしらってある、ボルドーのもの。
通勤の時に使おうと思っていた。
私がその手袋を選ぶと、室賀さんは「なかなかいいセンスしてる」なんて言いながら、私の手から奪った。