箱入り結婚のススメ
「でも、遅くなるといけないだろう?」
「いえ。今日は秀明さんが帰ってくるから、ご飯食べてきますと言ってあります」
「そっか。だけど、お父さんがいい顔しないだろ?」
「あまり遅くならなければ、大丈夫です」
今日は父に叱られても、彼と一緒にいたい。
ふたりでスーパーに行くと、新婚みたいで照れる。
麻子の結婚を聞いたばかりだから、余計なのだと思うけど。
「ビール、飲みますか?」
「いや。今日は舞がいるから、酔っぱらったらもったいない」
そんなことを言ってもらえるのも、幸せだ。
オムライスの材料を買うと、再び彼の車に乗って久しぶりに彼の部屋に向かった。
秀明さんは出張に行く前に、私に部屋のマスターキーを預けてくれた。
特に用があった訳じゃない。
だけど、部屋の鍵を預かったとき、"彼女"としてひとつステップアップした気がして、心躍った。