箱入り結婚のススメ

「舞、片付けてくれたの?」

「はい。一度だけ来て、お洗濯とお掃除を」

「それはありがとう」


たったそれだけのことなのに、すごく喜んでくれているようで、顔がほころぶ。


「早速、オムライスを作りますね」


キッチンに入ろうとすると、秀明さんが私の腕を引く。


「待った。その前に」


彼は私を真っ直ぐに見つめ、顎に手をかける。


「会いたかった」


ゆっくり近づいてきた彼は、私の唇を覆う。

何秒くらいだったのか。
今までで一番長かったキスは、泣きそうにうれしかった。


すごく会いたかった。
電話で彼の声が聞けても、彼の体温を感じたかった。

麻子のことでケンカになってしまったときも、もしもこうして直接話せていたら、誤解を生むことだってなかった気がする。


「はぁ。舞がホントにいる」


彼はそのまま私を抱き寄せて、「フーッ」と大きな溜息をついた。
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