箱入り結婚のススメ
「舞。お父様が寂しがるから、秀明さんと時々ご飯食べにいらっしゃい」
「はい」
この家を出ても、私はこの家の娘なのだ。
父や母の過保護さに息苦しさを覚えたこともあった。
社会に出て、初めて外の世界を知ったとき、色々な経験をしてこなかったことを悔やみもした。
だけど……やっぱりこの家に生まれてきてよかったと思う。
父や母に会えたから。
その晩の食事はそれはそれは楽しかった。
あまり話さない父とも、私の小さな頃の話で盛り上がり、就職してから、父と母とあまり会話を交わさなかったことを思いだして後悔するほどだった。
まるでコースー料理のように最後にコーヒーを飲むと、私は立ち上がった。
「お父様、お母様……これまで私を育ててくださり、ありがとうございました」
ちょっと窮屈だった生活も、私を大切に思っていてくれていたからだとわかった。
父と母には感謝してもしきれない。