箱入り結婚のススメ
「私達はたくさんの式のお手伝いをしますが、速水様の式も忘れられないものとなりました。それでは」
深々と頭を下げた安永さんは、メイクさんに私を託して控え室を出ていった。
なんだか彼女の目がうっすらと潤んでいたような気がする。
着替えを済ませると、張りつめていた気持ちがホッと緩んで、立ち上がることすら忘れていた。
「舞?」
「あっ、はい」
控え室を覗き来た秀明さんに呼びかけられ、慌てて返事をすると「疲れただろう?」といたわりの言葉をくれた。
もちろん、一日中注目され、次から次へと着替えをし、慣れない作業ばかりで疲れない訳がない。
だけど、この心地よい疲労感を二度と味わうこともないと思うと、もう少し余韻に浸っていたい気もする。